突発サイコホラー

　丸２年ぶりくらいか？

　ちょっと寒い話をしようか。
　電気の話だ。
　私が住んでいるのは、平凡な鉄筋二階建てのアパートだ。
　築何年くらいなんだろう。部屋に備え付けのクーラーが９２年製とあって戦慄したから、十年は超えているんだろうか。
　越してきたばかりのころに、蜘蛛の関節をした女や、長い腕の女を見た話はしたよね？
　今度はそれほど怖くないかもしれない。そもそも前の話だってそれほど怖かった気はしないんだけれど、とにかく電気の話。
　住んで何年になるのかな。丸、三年と…半年くらいかな。その間私、部屋の蛍光灯を一度も換えたことがない。
　十畳一間のベッド兼リビング、細長いキッチン、流しの上にも蛍光灯はあるのだけれど、一度も、換えてない。私は普通の人に比べるとたくさん寝ないとまともに稼動しないから、電気をつけてる時間が少ないというのはあるのかもしれないね。でも、ほら、電気をつけたまま寝ることも多いよ。夜型だし。
　蛍光灯はまあ、長持ちするに越したことはないから、いいのかな。
　問題は風呂場の白熱電球。白くてまろい、なにか思いついたときに、！マークと一緒に浮かぶやつ、あれね。
　あれが、おかしい。１ヶ月とか２ヶ月しか、持たない。
　なにかスイッチを入れたとたんに「バチッ」って音がしてフィラメントが切れちゃうの。
　どういう法則があるのか、分からない。湿気とかのせいでもないと思う。お風呂に入ってる最中に切れるわけじゃないから。
　不思議だよね。
　ただ、思い当たることはいくつかある。
　お風呂が丑寅の方角にあるということ。
　トイレと一緒のユニットバスだということ。
　鏡も、丑寅の方角を向いていること。
　この三つは、ちょっとそういうのに五月蝿い子がうちに来たときに眉を潜めていたことで、私は別に、そういう霊とか風水だとかを信じているわけじゃないんだけど、言われないよりは言われたほうが気になるのは当然のことで…。
　でもアパートなんだから、みんなユニットバスだしみんな丑寅の方角なわけで、じゃあ右隣も、左隣も、同じことでお悩みなのかな。だから微妙に風水って信じにくい。
　なんて、思いながら電気のつかないお風呂に入っていたんだけど。懐中電灯を持ち込んでね。
　お湯を出すときに、蛇口をひねるでしょ。そのときにね、

「ドンッ」

　って…壁をたたかれた。
　すごくびっくりした。シャワーを浴びたのが、夜の１２時過ぎだったから、五月蝿かったのかな、と思って、水量を小さくして、鼻歌も止めて、ささっと、髪を洗った。
　それから顔を洗って、あわ立てた石鹸にもう少し水を足そうとしてコックをひねったらまた、「ドン！」って。
　今度は、すごく怖くなった。

　続かない。